業界初 『SS21/正弦波合成法による地震波作成プログラム』が「国土交通省長周期地震動対策*1」で用いられる「基整促波」の作成機能を強化
平成28年6月24日、国土交通省住宅局建築指導課より「超高層建築物等における南海トラフ沿いの巨大地震による長周期地震動への対策について」が示され、平成29年4月からその審査が始まりました。
「長周期地震動対策」では、長周期地震動対策の対象地域10区域における平均的な地震動、または全国の地震観測地点や三大平野の任意地点におけるサイト特性を反映した地震動である「基整促波」が主に利用されることになります。 『SS21/正弦波合成法による地震波作成プログラム』(モニター版)(以下『正弦波合成法による地震波作成プログラム』)ではサイト特性を反映した基整促波を作成するための次に示す機能をリリースしましたのでお知らせいたします。
【機能アップ内容(Ver.0.90)】
サイト特性を反映した基整促波を作成するときの係数を「三大平野の任意地点」として設定する場合に用いる地下構造モデルに内閣府のモデルを追加し、既存の地震調査研究推進本部のモデルのいずれかを選択できるようになりました。いずれも建設地点の位置(緯度・経度)を入力することで計算に必要な情報が地下構造モデルデータから自動的に抽出されます。 同じくサイト係数を「三大平野の任意地点」として設定する場合の建設地点の地震伝播時間Tzを建設地点周囲のモデルデータ4点のTz1~Tz4と建設地点との位置関係から補間して求めるようになりました。これにより、約1kmメッシュで構築されている地下構造データから建設地点の地盤特性を連続的に予測することができます。
『正弦波合成法による地震波作成プログラム』は、与えられた設計用目標応答スペクトルおよび地震波の位相特性に関する条件から、正弦波合成法による地震動の加速度時刻歴波形を作成するソフトウェアです。
「国土交通省長周期地震動」作成に関する特長
地震動作成に必要なデータを自動設定
建設地点の位置(緯度・経度)や震源断層を指定するだけで、地震波の作成に必要な全国共通の回帰係数や観測地点固有のサイト係数および三大平野の任意地点の地震波作成に必要な約1kmメッシュでの地下構造データなどを自動的に設定します。
改良経験式に対応
「国土交通省長周期地震動」では、応答スペクトルを推定する回帰式によるモーメント・マグニチュード(Mw)の2乗項が加わりました。さらに太平洋プレートまたはフィリピン海プレートの地震によって、選択したサイト係数を区別することになります。ソフトウェアでは、これらの改良経験式に対応し、サイト係数を自動的に選択します。
「基整促波」が対象としている安政東海地震、宝永地震および内閣府・南海トラフ巨大地震に対応するための震源断層モデルを搭載
安政東海地震、宝永地震および内閣府・南海トラフ巨大地震の各震源断層データ(前述)を搭載しています。 旧対策試案*2の宮城県沖地震(Mw7.6)の指定も可能です。これらの震源断層データは、微小震源域の座標データ(経度・緯度・深度)をそのまま反映しています。
計算を行う震源断層座標データの水平投影図(白地図は国土地理院地図閲覧サービスより引用)
対象地震 | 安政東海地震 | 宝永地震 | 内閣府・南海トラフ 巨大地震 |
|
---|---|---|---|---|
駿河湾域 | 8.1 | 7.7 | 8.0 | |
東海域 | 東海域西断層 | 8.3 | 8.3 | 8.4 |
東海域東断層 | 8.3 | 8.3 | 8.3 | |
南海域 | 南海域西断層 | - | 8.4 | 8.4 |
南海域東断層 | - | 8.4 | 8.4 | |
日向灘域 | - | 8.0 | 8.4 | |
全体 | 8.6 | 8.8 | 8.9 |
三大平野の任意地点(工学的基盤)または観測地点(工学的基盤または地表面)での地震波の作成が可能
建設地が三大平野内(関東平野、濃尾平野、大阪平野)であれば約1kmメッシュ間隔で構築されている地下構造データベースの深部地盤速度構造を利用して、任意地点での工学的基盤における地震波を作成することができます。また、対象を観測地点とすれば建設地点に最寄り(から最大5番目まで)の地震観測地点での地表面または工学的基盤の地震波が作成できます。
応答スペクトルと群遅延時間の平均と標準偏差図を表示
対象の地点と地震の設定後は、波形作成の前に応答スペクトルと群遅延時間の平均と標準偏差図が確認できます。
「国土交通省長周期地震動」は正弦波合成に必要な位相情報を群遅延時間で表しており、地震動の卓越周期が継続時間とともにどのように変化するかを視覚的に確認することができます。
連動型地震に対し波形の合成機能を追加
複数の震源断層(セグメント)が連動して起こる地震に対しては、文献1)に示されている考え方に基づいて、破壊伝播時間を考慮して、波形を足し合わせることができます。また、合成された連動型地震の応答スペクトルも計算します。波形を足し合わせる際、セグメント毎に加速度符号を反転させてケーススタディすることができます。
国交省長周期地震動の作成手順
(1)国交省・長周期地震動の追加
建設地点名、建設地の緯度・経度、考慮する震源断層、対象地点を選択するだけで、国交省・長周期地震動を簡単に追加できます。
対象地点は、「三大平野の任意地点」(工学的基盤)または「観測地点」を選択できます。
「観測地点」の場合は、工学的基盤または地表面のいずれかを選択して対象とする観測地点数を指定します。
例:観測地点数が3の場合、建設地から最寄りの順に3か所の観測地点が選択されます。
(2)国交省長周期地震動のすべての作成ケースを連続で計算
計算条件により未処理の作成ケースを連続で計算します。
計算対象の作成ケースは、「国交省長周期地震動」と「応答スペクトルと位相情報を指定したケース」が混在しても計算は可能です。
正弦波の合成は、指定の適合条件に到達しても適合度が向上する限り処理を繰り返すので、精度の高い計算を目指します。
解析中の画面では、反復計算中の波形やスペクトル図の状況や変化をリアルタイムに確認できます。
(3)連動型地震を作成するための時間遅れ(破壊伝播時間)を指定して[合成]処理
例:内閣府・南海トラフ巨大地震(Mw9)の場合*3
日向灘域~南海域~東海域~駿河湾域の計6 セグメントに対して、最初の破壊開始点から順に各セグメントの破壊開始点までの時間遅れ(破壊伝播時間)を入力します。連動地震を考慮するグループは、一度に最大3グループまで設定が可能です。
また、一部のセグメントの加速度符号を反転して合成させることも指定により可能です。
入力後、[合成]によりすべての合成処理が行われ、合成後の波形の応答スペクトルも計算されます。
「国土交通省長周期地震動」の地震応答解析での利用
工学的基盤の地震波より表層地盤の応答と設計用入力地震動の作成
工学的基盤での地震波として作成された「国土交通省長周期地震動」を基盤下方から鉛直入射し、表層地盤の応答とその影響を考慮した設計用入力地震動を地盤の応答解析で評価します。長周期地震動が重要視されるサイトは、堆積層が厚く比較的軟弱な表層地盤である可能性が高いため、有効応力解析による検討も必要になります。
「国土交通省長周期地震動」による建物の地震応答解析
建物への設計用入力地震動を作成することで、建物の地震応答解析が行えます。 『正弦波合成法による地震波作成プログラム』→地盤の応答解析ソフトウェア『ShakePRO』→地震応答解析ソフトウェア『DynamicPRO』などへの地震波ファイルへの読み込みは、「SS21accファイル」を指定することで簡単に行えます。
- *1国土交通省住宅局建築指導課:超高層建築物等における南海トラフ沿いの巨大地震による長周期地震動への対策について (関連資料、別紙 1~6 含む)、2016.6.24
- *2国土交通省住宅局建築指導課:超高層建築物等における長周期地震動への対策試案について(関連資料、別紙1~5含む)、2010.12.21
- *3内閣府・南海トラフの巨大地震モデル検討会:強震断層モデル編-強震断層モデルと震度分布について-、2012.8.29
『正弦波合成法による地震波作成プログラム』は、「振動解析」年間使用・保守サービスにご契約いただいているお客様が無料でご利用いただけるソフトウェアです。
2017年6月15日
ユニオンシステム株式会社
開発部 部長 川野 弘二