(愛知県)
構造・規模:鉄骨造2 階建て 543.36m2
両方向共 ブレース付きラーメン構造(ルート3)
基礎構造 :直接基礎(柱状改良杭)
本建物は、2 階建てクリニックの新築建物です。ブレースを意匠的に印象付けたいという要望があり、構造計画は適正なブレースの配置をすることが必須となりました。エントランス外部から建物へ進入する際に2 階天井面の水平面が印象的であったので屋根は変形寄棟ですが、天井面で構造体を作り屋根は小屋組とすることで意匠に配慮した構造計画としています。
構造計画概要
① エントランス部が建物南東の角にあり、そこを起点に2階がL型に吹き抜け、開放感のある計画となっています。吹き抜けに面する2階外壁ガラス面に大胆なトラスを設け、意匠的な効果を期待したいという計画でした。トラススパンは南面:9m、東面:20m、トラス成は2階の階高と同じ3mです。すべてのブレースを圧縮ブレースにすると建物全体で考えたときに地震に対して偏心が大きくなります。したがって、R階梁のたわみ量を制御するのに必要な箇所だけを圧縮ブレースとし、その他のブレースは地震時に作用する引張ブレースとしました。
圧縮材はCT-150×75×7×10の2丁合わせ、引張材は
FB-65×6としました。クリニックという用途で利用者に木のやすらぎを感じてもらえる空間にしたいという意匠的な配慮からブレースに木部材が施されています。ブレースの材長がおよそ3.6mと長い割に断面が小さいことから
木部材が計算外ではあるが、施工時の振れ止めとして
作用することを期待しました。
② 1階大庇の元端側が大きく吹き抜けており、庇の垂れを防止する必要がありました。と同時に鉛直材が無いことからR階梁のたわみも制御する必要がありました。エントランス吹き抜けの開放感を損なわず庇を引っ張り上げ、R階荷重を負担できるように方杖のような圧縮ブレースを設けました。庇の垂れ止めブレースはCT-150×75×7×10の2丁合わせとしました。その際に屋根庇面が1階庇荷重と釣り合うよう、水平ブレースによる水平剛性を十分に確保するよう配慮しました。
③ 2階の南東面に大胆なブレースを配したことにより地震時には建物が大きく偏心します。偏心を最小限に抑えるために計画可能な範囲でバランス良く鉛直ブレースを配置しました。
『SS7』利用方法
当初は任意形状立体フレーム応力解析ソフトを利用して応力算定まで行い、断面算定、二次設計はExcel®で行う予定でしたが、『SS7』であればモデル化が可能であるとのことで利用しました。リリース直後であったので任意形状立体フレーム応力解析ソフトの応力結果と照らし合わせながら設計を進めました。解析結果はソフトによる大きな差はなく、『SS7』で応力算定→断面算定→二次設計までを一貫計算でき、大幅な時間短縮となりました。
別途検討項目
二次設計時の梁軸力を考慮した別途検討、ブレース接合部の検討は手計算で補いました。柱や梁といった母材は『SS7』でのみ設計しました。
確認検査時の指摘事項や対処方法
デフォルト値の確認や質疑などもありましたが、Webサイトに掲載されているQ&Aを活用して解決できました。