(東京都)
延床面積約70㎡、軒の高さ約6.5m、最高の高さ約9.0m の木造(軸組工法)2 階建ての一戸建ての住宅であり、確認申請上は四号特例の建物である。
屋根形状は切妻で、2 階の一部に小屋裏ロフト(吹き抜け形状)を有する断面計画となっている。
基礎形式は直接基礎(べた基礎)で、耐力壁仕様は告示に準じている。
『SS7』利用方法
四号特例の木造住宅は構造計算を行わず、壁量計算に留めることが一般的であるが、本建物については『SS7 Op. 木造ラーメン』の機能を使用し、全体的な構造チェックを行った。
構造チェックの対象は、地震・風圧に対する層間変形角の確認、接合金物の選定、重量算定結果を用いた基礎スラブ配筋の選定等である。
特に、一部小屋裏の吹き抜けを有することによる耐力壁の水平力分担の状況を確認し、小屋裏耐力壁の配置の決定や偏心の影響による接合金物の選定等を行ったが、これらは建物形状によって影響を受けるものの、一般的な壁量計算や接合金物のN 値計算では、詳細を把握することが困難と思われる事項である。
基礎設計においては、荷重の偏在を考慮した接地圧分布の確認および基礎スラブ配筋の検定までを『SS7』の計算機能を用いて確認した。
2 階建ての木造一戸建て住宅において接地圧等があまり問題になることはないと思うが、本建物は細長の平面形状で短辺方向はやや塔状の架構であったことから、長期接地圧だけではなく地震・風圧時の計算結果を数値として確認することで安心感を得られたと感じている。
その他
弊社が扱う構造設計の種別は主にRC 造・鉄骨造であり、木造は多く扱っておらず、依頼を受けた場合には任意形立体応力解析プログラムにて、モデル化・応力解析を行ったうえで種々の検討を別途検討として対応する事例があった。
設計フローとしては煩雑となるため、木造専用の一貫計算プログラムの導入を検討した時期もあったが、入力形状の自由度が高いプログラムにおいては、入力操作を習得する時間を要することに加え、木造設計の依頼が多くなかったこともあり、現在まで導入に踏み切れなった経緯がある。
『SS7 Op. 木造ラーメン』は入力操作に加え、計算内容の原則的な考え方や結果の照査もRC 造や鉄骨造と変わらないため、導入に際して特に不安を覚えることはなかったと感じている。
今後、建築基準法の四号特例の改正が施行され、小規模木造建築物にも構造計算を行うことが身近になっていくことと思うが、『SS7 Op. 木造ラーメン』の機能もますます充実することに期待し、より迅速で高品質な構造設計が提供できる体制を整えていきたいと考えている。