本建物は、愛知県に建設する鉄筋コンクリート造平屋の屋外観覧場です。1階にダッグアウト・更衣室・放送室等を有し、2 階は全て観覧席です。確認申請上は2階建てですが、構造設計上は平屋です。
構造計画概要
平面形状はXY方向共に36.4mであり、グランドの形状に合わせたアール形状です。立面形状は、グランド側から外部に向かって高くなる台形形状です。2層の短辺方向大梁と一次小梁は観覧席形状に合わせ、折梁形状としました。
構造スリットは設けず、柱量・壁量を確保し設計ルート1を採用しました。平面形状がアール形状であるため、通常の0°・90°加力だけでなく、45°・-45°加力の検討も行い断面を決定しました。
また、観覧席は経済性を考慮しプレキャスト部材は用いず、全て在来鉄筋コンクリート造で設計しました。
基礎は直接独立基礎とし、基礎下は支持層までラップルコンクリートで施工しました。
『SS7』利用方法
柱位置は節点移動と節点同一化、柱の向きは柱の回転を使用し実状に合わせました。立面形状は、柱の内法高さが実状に合うように節点の上下移動を使用しました。
折梁や大梁の平面的なアールは、直線部材にモデル化しましたが、余力のある断面とすることで対処しました。
雑壁もRC造のため、フレーム外雑壁を入力する必要がありましたが容易に角度をつけて配置することができました。端点を捉えてCADで作図をするように雑壁を入力できる点も便利でした。
壁量は地震力の作用方向に対する角度で補正したものを算出し、壁角度や断面積はCSV出力で確認することができるため、想定した壁量になっているかを手計算で追うことが可能でした。
別途検討項目
大梁が傾斜しているため、軸力を考慮した大梁の断面算定を行いました。『SS7』で大梁に生じる軸力は確認することができるため、その軸力を用いて別途断面算定を行いました。
また、壁式構造のEV架構を2層に有しているため、『SS7』上は重量のみを考慮し、別途ペントハウスの検討を行いました。
確認審査時の指摘事項や対処方法
構造スリットを設けていないため、雑壁開口間の方立壁の検討を求められました。平面解析ソフトで方立壁に生じる応力を別途算出し、増加するせん断力が上下梁の許容せん断力以下であることを確認しました。
その他の特筆すべき指摘事項はありませんでした。
設計ルート1は柱量・壁量が重要であり、その点を実状に合わせてモデル化できたことが作業効率に繋がりました。