小諸蒸留所は地上2階建ての工場であり、S造と一部RC造の構造です。平面形状は、約長辺33.9m×短辺32.2mのややT形で、西側の蒸留所部分と東側のロビーに2層吹き抜けがあります。熟成倉庫は25m×40mの平面形状で、立面形状はY方向にアーチ形の形状となっております。
構造計画概要
両建物は設計ルート3を満足するように設計しました。 小諸蒸留所の鉛直構面は、鉄骨ポスト柱の列柱やRC柱、耐震壁などで構成され、鉄骨とRC造の混構造架構として設計しております。空間の開放性を考慮して、屋根と2階部分の鉛直荷重を支える鉄骨ポスト柱の列柱によって構成されており、室内には柱を設けない無柱空間としております。熟成倉庫の円弧部材の有効座屈長さは、強軸回りは安全側に柱脚から頂部までの1/4円弧長としております。弱軸回りの有効座屈長さは、小梁の支点間長さとしております。
『SS7』利用方法
蒸留所の設計では通り芯の入力がかなり多くなっておりますが、通り芯の追加入力は適宜簡単にでき、調整も簡単に行えるため、便利に感じております。今回の物件では、RC耐震壁とS梁との接合をピンにしており、こちらの材端条件の入力もシンプルにできました。X12通りにあるような大きいスパン部分ではビルドボックスの鉄骨梁を使用しておりますが、こちらはH形鋼の形状登録に置換して登録・配置しました。二次部材に関しては、小梁を大梁として登録・配置することで実状と同じ水平ブレースを入力するようにしました。熟成倉庫の設計は、実際はシングル材なのですが、モデル上では柱が立ち上がっていき、途中で梁材になるようにして、12分割で入力しています。『SS7』では節点上下移動、同一化、ダミー層を駆使することで、このような円弧型が入力できたので、とても助かりました。座屈長さの調整も座屈長さ係数の直接入力の項目のおかげで問題なく入力できました。
別途検討項目
蒸留所の柱脚形状に関しては、L型形状のベースプレートで両方向ブレースがついており、一貫ソフト内では計算ができない形状ですので、別途計算で対応しております。熟成倉庫の桁行方向の小梁および妻面のヨコ使いH形鋼はプログラムの制約上、自動入力ができないため、両端がピン接合であるこれらの部材は、断面性能を直接入力し、別途計算によって断面算定を行っております。
確認検査時の指摘事項や対処方法
熟成倉庫は円弧状でダミー層、座屈長さ、層間変形角などの項目で指摘が多かったと思いますが、解析時に出てくる応力図を利用させていただき、応力状態の比較検討や根拠を示すことで十分に納得していただけたと思います。