本建物はタオルや衣類などの生産と販売店舗を併設する2階建ての撚糸工場です。建設地は東日本大震災にて被災した地域であり、震災により失われた交流人口回復の先駆けのシンボルとなるような建物を目指しました。建物形状は生産する商品名にちなみ「0」の数字をモチーフとした楕円形状を基本としており、中央部には中庭を計画しました。楕円部は片流れ屋根、跳ねだし部は陸屋根としています。建物南東側にエントランス・商品販売所(ショップ)を設けており外壁にはガラスカーテンウォールを採用し開放感を感じる空間となるように計画しています。一方楕円北西部は生産工場となっているため、サイディングボードとしています。
構造計画概要
主要構造はS造とし、本体主体部は円形の特性を活かし、各フレームを放射状に構築しています。南東側(水上側)については、より開放的な空間と感じられるように柱をスリム化することを目的とし、シームレス鋼管を採用して鋼管径を小さくし、水平力をなるべく負担しないような架構としました。また、屋根勾配を大きく取っている関係で水上-水下間の梁レベルの差が4.5m程と大きくなり、X方向加力時に大きく偏心してしまう建物となります。そのため、水下側の柱を斜めに配置しブレース効果を発揮できる架構としました。水下側のブレース構面のみでは剛性バランスが悪く、建物が大きく偏心してしまうため、建物中央部にもブレース構面を設け、架構全体の剛性バランスの改善をできる限り図り、ブレース構面2面にて地震力に抵抗する計画としています。
『SS7』利用方法
建物形状が楕円形状となっているため、「軸振れ」により実状のスパン・形状となるようにモデル化を行いました。また柱は楕円に沿って梁と直交に交差するように軸回転しているため、「柱の回転」で柱を回転させ、実状に合わせたモデル化を行いました。屋根勾配についても「節点上下移動」にてモデルに反映させています。陸屋根部については、楕円形状屋根と連続性がないため「多剛床」の指定を行い、各剛床に独立した変位を持たせて解析を行いました。また、小梁など二次部材の配置も「小梁の角度調整」にて実状に沿った配置とし荷重伝達を考慮しました。
前述した通り、本案件はX方向加力時に大きく偏心してしまいます。鉛直ブレースを配置する場所には制限があり、建物南面はブレースの配置ができず、建物中央部および北面のみの配置となっているため、偏心率は大きな値となっております。最終的な解析では屋根面を剛床としています。そのため、屋根面水平ブレースについては、ブレース構面まで地震力を伝達できるように検討しています。
別途検討項目
屋根面については、剛床として解析を行っているため、鉛直ブレース構面へ地震力が伝達可能であることは手計算レベルで確認しておりましたが、『SS7』の「水平ブレース」にてブレースをモデル化し、非剛床解析を行い問題ないことを確認しております。また偏心率がかなり大きくReが1.5程度となっているため、本案件は『SS7』での検証の他、手計算レベルの検証として各フレームのゾーニングで断面検討も行っております。
確認検査時の指摘事項や対処方法
モデル化に関する指摘として、軸振れや節点移動、節点同一化を多く採用してモデル化を行ったため、詳しいモデル化の説明を要求されました。そこで右図に示すような「モデル化案内図」を追加提示したほか、各節点の座標一覧表を提示し了承を得ました。