(東京都)
本建物は自動車の展示販売を主たる用途とする商業施設です。バックヤードには自動車の整備工場が併設されています。幹線道路に対してセットバックする段々形状となっていることが本建物の特徴です。ファサード部には細径のポスト柱を配置し、主たる耐震要素はファサードからセットバックした位置の500mmの角形鋼管柱によるラーメン構造として、外周部に太い部材が現れないように配慮しています。ホール部分の外壁には有孔CLT耐震壁を配置することで、一見耐震要素が配置されているようには見えない特徴的な外観を実現しています。規模は長手方向95m、短手方向45m。建物高さは15mの3階建てです。
構造計画概要
自動車展示のために3Fまでの自動車用スロープを設けること。自動車整備工場を有するため駐車場用の積載荷重で最大16m超のロングスパンとする必要があること。商業施設でもあるため内部は見通しのよい構造が求められること。以上の理由から構造種別および形式は鉄骨ラーメン構造を基本とし、偏心率調整のために一部に鉄骨ブレースを設ける計画としました。
建物から突出する箱型のボリュームのように複雑な形状が存在しますが、屋根梁を突出部に連続させ片持ち梁形式となるように配慮するなど、形状に対して適切な架構計画を行っています。
外周部のポスト柱部の変形抑制と偏心率の調整のために厚さ120mmのCLT版を鉄骨柱の間に挿入するCLT耐震壁をファサード部分に配置し、建物の印象を柔らかくしながら構造設計上の整合をとっています。
表層地盤はN値の小さな粘性土であるため、GL-15m付近に出現する硬質砂礫層を支持層とするPHC杭を採用しています。
構造設計ルートはルート2として設計しています。
『SS7』利用方法
杭基礎まで一体でモデル化することにより基礎設計を円滑に進めることができました。
段々形状であることから各部材レベルに応じて層の設定を行い、スロープを有する部分に関して適宜節点同一化の設定を行うことで建物形状を適切にモデル化しました。適宜ダミー層を設定するため3層の建物ではありますが、結果として15個の層設定を行っています。
また最上階では屋根がふたつに分かれる形状であるため、多剛床の設定を行っています。
CLT耐震壁は汎用解析ソフトによる別モデルを作成し水平剛性を算出したうえで、ブレース置換により『SS7』上でモデル化を行っています。
鉄骨3階建て柱の防火被覆(建築基準法施行令70条)の除外検討のために外周部のポスト柱に関しては一つの柱をダミー柱と変更したうえで長期荷重において周辺部材が短期許容応力度以下となることを確認し、当該柱の防火被覆が不要であることを確認しました。この検討を除外可能なポスト柱すべてに対して行うことで不必要な防火被覆を除外しコストダウンを図りました。
確認審査時の指摘事項や対処方法
中間層で柱を止める場合(RFまで柱を通さず、3Fレベルで柱を止め、かつRFに梁が存在する場合)の柱頭部の柱梁耐力比もルート2の規定(1.5)を満足するように求められました。
柱梁耐力比の規定を満足することは構造計画上不可能なため、応力状態から柱にヒンジは発生しない(急激な耐力の低下を生じる恐れのない)ことを説明し部分的に柱梁耐力比の規定を適用する必要がないことを確認しました。
CLT耐震壁のモデル化に関しては特に指摘を受けることなく円滑に審査を終えることができました。