石川県金沢市の犀川沿いにある小学校校舎の建て替え計画。屋上にプールを有する多雪地域のRC造校舎。
既設の体育館を避けるように計画されたコの字の平面計画は、1年を通して雨雪の多い北陸気候の水に対する建物への影響を加味し、エキスパンションで建物を構造的に分割しない平面計画としている。基本・実施設計を『SS7』で実施している。
構造計画概要
- 平面形状がコの字不整形で、両端空間をつなぐ中央部には階段が計画されている。
- 立面形状は4階建てで4層部はセットバックしている。
- コの字平面の東(右)側の屋上に25mプールが併設されており、屋上架構の一部にPRC梁を使用している。
- 南側玄関上部に図書館が計画されており、1層吹き抜けで、また大規模なバルコニーが併設されており、華奢な柱のファザードが意匠的に必要であったため、鉄骨架構を採用した平面混構造となっている。
- 北側正面エントランスに出が5mのRC打ち放しの庇が計画されており、RC造フラットスラブを鉄骨ポスト柱で支持する構造としている。
『SS7』利用方法
- 平面、および、立面形状が不整形な建物を、ダミー層や節点同一化、節点移動等を使用して、ほぼ実状どおりモデル化できており、一次設計(許容応力度)、二次設計(保有水平耐力、偏心率、剛性率)を一貫計算で設計できている。
- RC造一部鉄骨造の平面混構造となるが、RC造部、鉄骨造部を実状どおり一体でモデル化できており、ワンモデルで計算できている。
- 最上階4層はセットバックしており、斜線制限による屋根勾配から、一部極短柱になるのを避けられない計画にあった。RC柱では破壊形式の調整が難しいため、鉄骨柱を採用して柱頭柱脚に既存露出柱脚を設定してバネ剛性、耐力を評価している。
別途検討項目
- 北側の庇は、フラットスラブを鉄骨ポスト柱が支持する架構のため、線材モデルでは性質上、梁に応力が集中するため部材検定比がNGとなるが、実状は床版全体で伝達するため、スラブ・梁をシェル要素として解く必要があった。ユニオンシステムのFEM解析(『FEM』)を用いて床梁の安全性を別途設計している。
- 平面形状がコの字の形状で、両端の空間をつなぐスラブには階段の吹き抜けがあるため、地震時の位相差応力をスラブで処理しうるかの検討を手計算で行っている(本案件申請完了の直後にRCスラブをブレース置換する機能が追加され、一貫計算で自動処理できるようにアップデートされている)。
確認検査時の指摘事項や対処方法
モデル化や検討内容に対して、クリティカルな指摘はなかった。
プラグイン
『SS7』は躯体図作図・設計数量算出プログラム『SIRCAD(株式会社ソフトウェアセンター)』との相性が非常に良い。
躯体図作図、断面リストはほぼ完結でき、伏図軸組図も部材の寄りまで正確に反映してくれる。
作業の効率性はもちろん、部材の不整合やモデル化のミスを発見するツールとしても優れた相性を発揮している。
設計数量算出プログラムは、モデル化したすべての躯体数量を算出してくれるので、設計の概算見積もりとして十分採用できるツールである。
ユニオンシステムの良い点
サポートに対して、データをアップする方法が便利で、1営業日以内に返答があるので、昨今の短縮された構造設計期間でも安心して当該ソフトを選択できる。また、『SS7』は入力が楽で、かつ計算速度が速いのでプログラム部分をストレスなく迅速に進めることができる。
ユニオンシステムに期待すること
『WRC』が『SS7』と比較して脆弱なため、ぜひ改善していただきたい。木造も開発途上中なので、ぜひ木造+壁式構造の立面混構造にも対応していただきたい。