当該建物は愛知県豊田市に建設した地上3階建てS造の物流倉庫です。規模としては、平面形状X方向169m、Y方向119.5m、最高高さは22.599m、延べ床面積56,670m²です。
構造計画概要
X、Y両方向ともブレース併用のラーメン構造で、ルート3で設計しています。1、2階は座屈拘束ブレース(アンボンドブレース)、3階は引張ブレースを使用しました。後ほど詳しく記述しますが、スロープ部分は上部を本体と分離、基礎は本体と一体としています。2、3階床にはニューフェローデッキを使用したコンクリートスラブ、屋根は特定勾配屋根の割り増しを行う折板構造を採用しました。
基礎構造は杭基礎と直接基礎の併用構造です。当該地の液状化については、地盤調査による細粒度含有率試験を行い、液状化の恐れが無いことを確認しました。
『SS7』利用方法
当該建物の特徴として、スロープの扱いを工夫しました。本体と一体でのモデル化も検討しましたが、偏心等の影響により不経済となったため、スロープ部分を副剛床、本体を主剛床として同じ解析モデルで検討しました。スロープ部分の扱いは難しく、局部的な応力集中が生じないように試行錯誤を重ねた結果、経済的に有利になった結果を採用しました。
基礎構造に関しては、直接基礎部分と杭基礎部分が混合していましたのでモデルを2つ作って、データの受け渡しをしながら進めました。上記のスロープ部分にも重なりますが、結果を比較しながら設計を行える点は『SS7』の良い点です。
この物件を設計していた当時は『SS7 Op.複数起動』がありませんでした。現在取りかかっている同じような物流倉庫ではとても重宝しています。「前回どうだったかな」と、似た物件のデフォルト値や計算条件などを参照しながら新たなモデルを作成していくときに役立っています。
別途検討項目
柱JBCR385や2階の一部の大梁に採用した横補剛省略工法、杭頭補強筋にはクラウンパイルアンカー工法など『SS7』で対応していない検討項目は、別途メーカーと協力して個別に検討しました。
その他
図面化するときには『SS7』データをSIRCADに変換しています。『SS7』はSIRCADとのシンクロ性が高いので、なるべく図面を意識しながら入力できるところが便利です。例えば、小梁の符号などB1、B2・・・と入力していましたが図面に即した入力を行うことが可能です。今までは、解析は解析、図面は図面だと割り切っていたのですが、図面を意識しながら『SS7』で凝縮して行えるという点で価値があると思います。