本建物は、1階がピロティ形状のエントランス、2・3階に宿泊用途、4階に事務所用途のRC造4階建ての建築物です。敷地形状と日影規制により、建物の高さが決まり、各フロアの階高を低く抑えることと、2・3・4階はフレキシブルな空間を求められていることから梁型のない空間とし、フラットスラブを採用しました。
構造計画概要
平面計画は、フレキシブルに利用しやすい開けた空間と、将来の間仕切り変更に柔軟に対応するため、外観デザインにも寄与している外周耐震壁を剛性率・偏心率に配慮したコの字型配置としました。地震力のほぼすべてを耐震壁へ負担させ、内部は約6mスパンのフラットスラブで梁型を無くした自由度の高いプランニングを可能としました。東側の大開口部はウォールガーターとすることで、大きな偏心が生じないよう寄与する計画としています。
『SS7』利用方法
A)柱、梁、耐震壁(主架構)については『SS7』で解析できることから、荷重条件などを適切にモデル化し解析しました。
B)フラットスラブは『SS7』でモデル化ができないため、FEM解析モデル、手計算と比較しながら、近似な応力、変形となるようモデル化を行いました。以下『SS7』でモデル化について工夫した点を記載します。
①柱列帯について
地震力の伝達・剛性を確認するため1m幅の梁を入力解析し、φIを確認しました。その後、算出された協力幅を含んだ扁平梁としモデル入力、解析を行いました。
②柱間帯について
FEM解析に近似した応力、変形となるよう梁幅を決定し、入力しました。
③フラットスラブの応力・変形の確認
手計算、FEM解析、『SS7』モデルの応力と変形がどれも近似値であることを確認し、安全性に配慮しました。
C)本架構モデルY2通りでは、耐震壁が1層分の壁梁となるモデルとしています。壁梁エレメント置換は、剛体が無限大の軸剛性をもっていること、かつ、付帯梁の曲げ剛性とせん断剛性が100倍となっているため、実際の壁梁とした挙動とはことなる解析結果となることが予想されます。そのため、1層分の壁梁の応力・変形を適切に評価するため(1)剛床仮定の解除、(2)上下の付帯梁の曲げ剛性を壁と梁を含んだ、階全体の1/2分の剛性となるようにモデル入力を行い、近似解としました。
D)基礎については、地盤が非常によく直接基礎としました。敷地形状に納まりがよく、また合理的な基礎計画となるように、独立基礎と布基礎、べた基礎をモデル化して入力確認しました。上部構造と基礎構造を分けたモデルではなく、一体とした解析ができることから便利だと感じました。
別途検討項目
フラットスラブの応力と変形の解析は別途FEM解析と手計算を主体に用いました。また、柱や梁幅が薄い部分の定着長さの確認はRC規準に倣って別途手計算で確認しました。
『SS7』では特殊荷重として入力を行いましたが、建物東側2~4階に有孔開口ブロックが取り付くため、接合部の詳細検討は手計算で行いました。
確認審査時の指摘事項や対処方法
指摘事項としては、荷重に拾い漏れ、不整合、モデル化の説明といった程度で、プログラム使用上の問題点等の指摘はありませんでした。