本建物は沖縄県に計画されたホテル建築物(西棟、東棟、駐車場棟)のうち、東棟にあたる建物で、1階がレストラン、1階~17階が宿泊用途(ホテル)18階が大浴場を設けた地上18階建て、建物高さ59.8mの建築物です。
現在施工中で、2025年末に竣工予定です。
構造計画概要
東棟(18階)と西棟(18階)はエキスパンションジョイントで連結されています。
建物形状としては全体を考慮するとL字型であり、L字の横方向部分が本棟(東棟)に該当します。
平面形状について、宿泊部は整形ですが、屋外階段・エレベーター部はラーメン架構とした突出部となっています。
X方向をラーメン、Y方向は耐震壁架構としています。
開放性を高めるために、Y方向(耐震壁方向)の1階は耐震壁を無くし中柱を配置したピロティ架構としています。
基礎は、プレボーリング拡大根固め工法を採用しております。
X方向は3スパン+1スパン(階段)です。
Y方向は基本1スパンで、1階の間柱 階段部分などを追加したスパン数になります。
構造設計
客室部分のラーメン方向が3スパンしかない建物で、ラーメン方向の保有水平耐力を確保するのが難しく、意匠設計に階段部分がスパンに入るように設計を変えてもらい、スパン数を確保しました。
2階の梁については、崩壊時の柱の耐力に見合う梁断面を考慮し、梁せいを1500mm確保して階高を決定しました。
1階に間柱を配置することで、ラーメン架構の剛性を確保しました。
杭を4本打ちにすることで、杭頭補強筋と基礎梁主筋が干渉しないように設計を行いました。
『SS7』利用方法
柱・梁・耐震壁を形状どおり入力しました。
ピロティ階の中柱については複数モデルによる解析を行い、所要性能を確保しました。
具体的には、1階の中柱について上階の耐震壁中央のすべてにダミー柱をいれることで、1階中柱への軸力負担を増やし、残りの柱の負担を減らすことで、柱の終局耐力を減らした状態においても、モデル化が成立するのかどうか確認を行いました。
このような別途検討を行うとき、別データにして管理するのも良いですが、結果データだけで保存するやり方も便利でした。
突出部については、剛床・非剛床・平面骨組のモデルにより応力伝達の妥当性を確認しました。
ヒンジの発生などの確認がビジュアル化されてわかりやすく、複数モデルでの解析結果の確認が容易で、時間の省力化が図れました。
『SS7』の解析の諸機能も使いやすく、構造設計の効率化が図れました。
確認検査時の指摘事項や対処方法
ピロティ建物の設計については、2階耐震壁の曲げ崩壊、1階柱部材の弾性範囲内の確認など、事前に審査機関と打ち合わせした内容を確認しながら設計を行いました。
具体的には、
- 1階柱のせん断余裕度は1.40を確保
1階柱のせん断保証設計は不要としますが、ピロティ柱であるゆえに、1.40の余裕度を確保します。 - 余耐力法による部材判定ではFDランクを許容する
余耐力法ではせん断破壊先行となりますが、余裕度確保により問題ないとします。 - 1階部分のヒンジを許容しない
2階以上のDs=0.40(FA+WA、βu>0.7)とし、上層が崩壊するとき、1階のせん断破壊や局部崩壊は生じないようにします。
以上のような内容について、事前に話し合いながら設計を行いました。